変額個人年金という保険商品をご存知だろうか。最近、銀行や保険営業マンが盛んに勧めてくるこの商品は、その実態を理解せずに契約すると、将来後悔することになるかもしれない。

今回は、「変額個人年金とは何か」「変額個人年金のデメリット」「変額個人年金の手数料」「変額個人年金とNISAの違い」など、多くの人が疑問に思う点を明確にしながら、変額個人年金の闇に迫る。

1. 変額個人年金の仕組み

変額個人年金は、保険商品と投資信託が合わさったような仕組みだ。毎月一定額を積み立て、契約者が選んだ投資先(特別勘定)で運用する。将来、年金形式や一時金で受け取ることができるが、その受け取れる額は運用成績次第で増減する。

例えば、ソニー生命の「SOVANI(そばに)」という変額個人年金商品では、以下のような選択肢がある。

・日本株式型(TOP):東証株価指数(TOPIX)に連動 ・海外株式型(MSP):MSCIコクサイ・インデックス(日本除く先進国株式)に連動 ・日本債券型(NOP):NOMURA-BPI総合に連動 ・海外債券型(FTP):FTSE世界国債インデックス(除く日本)に連動 ・日本リート型:国内不動産投資信託(REIT)に連動 ・海外リート型:海外不動産投資信託(REIT)に連動 ・バランス型各種:株式と債券を組み合わせた分散型

契約者自身がこれらから選択し、配分を決める仕組みだ。一見、自分で資産運用できる柔軟な商品に思える。しかし、落とし穴はそこではない。

2. 税金面での負の側面

変額個人年金は、税金面で思わぬ落とし穴がある。例えば300万円を一時金で受け取る場合。

一時金で受け取る場合、一時所得扱いとなり、給与所得などと合算して税金計算される。一時所得は50万円の特別控除があるものの、控除後の半分が課税対象となるため、受け取る額が大きいと意外に税負担が重くなるケースもある。例えば、300万円の一時所得を年収550万円の会社員が得た場合、

300万円 − 50万円(特別控除)=250万円 250万円 ÷ 2 =125万円

この125万円が給与所得などと合算されることになる。

仮にこの会社員の課税所得が300万円だったとすると、これに125万円が加わり課税所得425万円となる。

所得税率は20%(控除額42万7500円)なので、

425万円×20%−42万7500円=45万2500円

もともとの300万円時点では、

300万円×10%−9万7500円=20万2500円

45万2500円−20万2500円=25万円

つまり、一時所得300万円によって、約25万円の所得税負担が増える計算になる。さらに、住民税も考慮すれば、税負担はさらに重くなる。これは、会社員が定年時にまとまった金額を受け取ると、一時に多額の所得が発生し、高額な税率が適用されるケースがあるということだ。

また、年金形式で受け取る場合も、公的年金等控除があるとはいえ、その控除額は年々縮小している。将来的には、控除額がさらに減り、実質的な税負担が増えるリスクもある。

3. 手数料の闇

莫大な手数料、これが変額個人年金最大の闇だ。代表的なSOVANIを例に見てみよう。

(1) 契約締結時費用…毎月の積立額に対し3%

(2) 運用関係費用(信託報酬)…年率0.0638%~0.858%

(3) 保険関係費用(契約維持費用)…年率1.2%

まず(1)の契約締結時費用だが、これは毎月積み立てるたびに3%取られる。月3万円なら毎月900円が手数料で消えていることになる。

次に(2)と(3)は、毎年積立金に対してかかる。積立金100万円で考えると、仮に信託報酬が0.8%なら8,000円、契約維持費用で1.2%なら12,000円。合わせて毎年2万円が引かれる計算になる。

さらに見逃せないのが、販売員へのマージンだ。契約締結時費用3%の一部に加え、保険会社から代理店や営業マンに対し、契約初年度保険料の50%〜100%もの高額報酬が支払われるケースもある。

例えば、毎月5万円、年間60万円の契約なら、営業マンに30万円が入ることも珍しくない。

つまり、あなたが支払った積立金の一部は、営業マンの懐に入っているわけだ。

【まとめるとこう】

項目内容タイミング具体例(積立3万円/月、100万円積立金)
契約締結時費用 3.0%初回手数料(積立ごと)毎月毎月900円
運用関係費用(信託報酬) 0.0638%〜0.858%運用資産にかかる手数料毎年年0.8%なら100万円で8,000円
保険関係費用(契約維持費用) 1.2%保険部分の手数料毎年100万円で1.2万円

要するに、毎月も取られるし、毎年も積立金からガンガン引かれる

4. NISAとの比較

では、NISAでS&P500に投資した場合と比較してみよう。

【月額3万円・5万円・10万円を10年・20年・30年積み立てた場合】

SOVANIとNISA比較シミュレーション表(月額積立・期間別)

🟦 毎月3万円積立の場合

期間SOVANI積立総額SOVANI最終積立額(運用益)NISA積立総額NISA最終積立額(運用益)
10年360万円422万円(+62万円)360万円502万円(+142万円)
20年720万円1,030万円(+310万円)720万円1,760万円(+1,040万円)
30年1,080万円1,930万円(+850万円)1,080万円4,080万円(+3,000万円)

🟩 毎月5万円積立の場合

期間SOVANI積立総額SOVANI最終積立額(運用益)NISA積立総額NISA最終積立額(運用益)
10年600万円703万円(+103万円)600万円836万円(+236万円)
20年1,200万円1,717万円(+517万円)1,200万円2,933万円(+1,733万円)
30年1,800万円3,217万円(+1,417万円)1,800万円6,800万円(+5,000万円)

🟨 毎月10万円積立の場合

期間SOVANI積立総額SOVANI最終積立額(運用益)NISA積立総額NISA最終積立額(運用益)
10年1,200万円1,407万円(+207万円)1,200万円1,672万円(+472万円)
20年2,400万円3,434万円(+1,034万円)2,400万円5,867万円(+3,467万円)
30年3,600万円6,434万円(+2,834万円)3,600万円13,600万円(+10,000万円)

結果は明白だ。SOVANIでは手数料負担が重く、運用利回りが3%程度にとどまる一方、NISAでS&P500に投資した場合、過去実績に基づけば7%程度の利回りが期待できる。最終的な受け取り額には大きな差が生まれる。

銀行員や保険営業マンは「銀行に置いておくよりはマシですよ」と言う。しかし、少なくとも資産形成が目的なら、「銀行<変額個人年金<NISA」が現実だ。

証券ではじめるiDeCo

5. 結論

変額個人年金は、営業マンにとっては極めておいしい商品だ。しかし一方で変額個人年金は、入口(手数料)、出口(税金)がかかる仕組みなのだ。契約者にとっては、高額な手数料負担と税金面のリスクを抱えながら、期待ほど増えない可能性が高い商品である。

「銀行よりマシ」という言葉に踊らされず、「もっとマシな選択肢がある」という事実を知っておいてほしい。


投稿者 イーロン